前述の2つの調査と漁業者や住民への聞き取りで、この地域特有の海ごみ問題が見えてきました。
海ごみ回収について
- リアス海岸である若狭湾はいくつもの小さな湾に分かれ、更に小さな入江があり、そに集落が点在する。
冬季の海ごみは北西の季節風を受けて漂着するため、入江によって量が全く違う。そのため、小学校区単位の自治会でも「地域の共通課題」として取り上げにくいようである。 - 同じ市町内であっても、海辺の住民以外は冬季の海ごみの状況をほとんど知らず、私たちがSNSで発信する情報に驚きの声が上がっていた。
夏には毎週のように海に通うアノミアーナ のメンバーでも、写真調査に参加して初めて、深刻な状況を認識した人もいる。
市民の理解、協力を得るためには、まず、現状の発信が必要だと感じた。 - 地形が複雑で海岸の利用状況が違うため、海岸管理者が細かく分かれている。
各管理者がそれぞれのやり方で進めており、同じ役場内でもほとんど情報は共有されていなかった。
隣接市町間での情報共有は全くなかった。県・市町ともに、全体を把握している人は誰もいなかった。 - 海ごみ回収には主に海岸漂着物対策事業補助金が使われている。
この補助金の負担割合は、国が7割、県または市町が3割である。
財政状況の厳しい市町では、この3割が捻出できない。
小浜市の場合、市管理の漁港が多いが、農林水産課の予算を海ごみ回収に当てようとすると、水産振興の予算を削ることになるという。
同じ市内でも県管理海岸は予算がつきやすい。 - 全ての市町で、夏の観光シーズンに向けて海岸清掃が行われている。
また、台風など大水の出水時は災害対応として漁港を中心に海ごみ回収が行われている。
しかし、冬季に大量に漂着する海ごみについては、回収していない海岸が多い。
理由として挙げられたのは、まず、その時期まで予算が残っていないこと。
回収してもすぐまた漂着するので、やっても意味がない。
そもそも、冬は観光も漁業もオフシーズンなので、回収する必要はない、というものだった。 - これまで海ごみ回収は、観光地の美観維持や漁業の妨げを除去するという目的で行われてきた。
地球規模での環境問題、生態系の破壊、人体への悪影響の懸念という観点から見れば、大量に打ち上がる冬こそが回収の好機である。
これまでとは根本的に違うシステムやアプローチが必要であると感じる。
回収された海ごみの処理について
- 敦賀市以外ではほとんどが埋め立て処分されている。
理由として挙げられたのは、様々なゴミが混じっていて分別が難しい。
分別に人手がかかり費用が発生するため分別していない。
分別しても塩分が多く炉を傷めるので焼却できない。
汚れているのでリサイクルに回せない。一般ゴミだけでいっぱいなので、海ごみまで処理できない、など。 - 埋め立てはおおい町以外はほとんどが市外や県外だった。
小浜市では、兵庫県に本社がある廃棄物処理業者に委託しているため、兵庫県に埋め立てられているようである。
運搬能力と処理容量にあまり余裕がないらしく、集めた海ごみが長期間にわたり海岸付近に留め置かれている。
また、年々処理単価が高騰しており数年前の約3倍になっている。 - 同じ海ごみでも漁業者や市民が回収した場合は一般廃棄物となり、業者委託した場合は産業廃棄物の扱いになるという。
それによって扱える業者が違い、処理のされ方も違う。
小浜市の場合、一般廃棄物の免許があり海ごみの処理能力のある業者は1社だけで、埋立て処分している。
漁業者や市民が集めた海ごみをリサイクルしたいと思っても、制度上の壁があり、難しい。